奇跡の脳

とても面白い本だった。著者(ジル・テイラー博士)自身が脳の専門家(神経細胞学者)であり、突然襲ってきた脳卒中からリハビリをへて立ち直るまでの記録である。このような立場の人が自身の体験を本にできたことがすばらしい。
先日テレビでも放送されていました。
https://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20090507-21-31163


本の内容は、著者のこれまでの人生、自分自身が脳卒中に倒れた朝の話からリハビリをして回復するまでの過程、それから読者へのメッセージとなっています。

まず前半で脳卒中になった人の状態がホントにリアルにわかる。著者自身科学者なので、さすが冷静に観察し文章によくできていると思った。著者は左脳をやられたのだが、言語と論理的思考をつかさどる左脳をやられると見ているものを意味づけすることができない。言語と記憶を並べる機能がなくなり、時間の感覚も全くなくなってしまうようです。
逆に残っている右脳が左脳の機能から解放され、右脳の静けさを表現できるように変わっていく。著者は涅槃(悟り)の状態に入っていると言っています。ここがとても面白い。

左脳の分析的な判断力がなくなっていますから、私は穏やかで、守られている感じで、祝福されて、幸せで、そして全知であるような感覚の虜になっていました。

著者は手術後失った左脳の力を取り戻すため、子供が言葉を覚えていくように、ゆっくり何度も繰り返し、リハビリを続けます。
涅槃の状態(宇宙との一体感)をなんとか失わない状態で左脳の力を取り戻すよう懸命に努力します。

回復するまでのわたしの目標は、二つの大脳半球が持っている機能の健全なバランスを見つけることだけでなく、ある瞬間において、どちらの性格に主導権を握らせるべきか、コントロールすることでした。

自動的に左脳で生きる、右脳で生きるということではなく、両方をコントロールできるということ。これはすごい発見だと思います。

本の後半は、右脳と左脳をもった人間がいかに右脳マインドを生かして喜びに溢れた状態で生きていくかについてスピリチュアル的(右脳的)に書いてあります。前半の客観的(左脳的)視点とは全然トーンが違います。

脳卒中の前まで、自分なんて、脳につくられた「結果」にすぎないんだと考えていました。だから、押し寄せる感情にどう反応するかに口出しできるなんて、思ってもみなかったのです。感情をどう「感じる」かに口を挟めるなんて、まったく思いもよらなかったのです。生化学がわたしを捕らえている90秒間だけ我慢したら、その後はさっさと解放してしまえばいいだなんて、誰も教えてくれませんでした。この事実に気づいたことが、人生の過ごし方に何と大きな変化を与えたことでしょう。

結局のところ、わたしたちが体験するものはすべてわたしたちの細胞とそれらがつくる回路の産物です。ひとたび、いろんな回路が、からだの内側でどんなふうに感じられるかに耳を澄ませば、あなたは世界の中でどうありたいかを選ぶことができます。

自分の感情は扱えること。90秒待つこと。そして選択できること。まさにいまやっていることだけど、シンプルなこの原理をみんなができるようになればホント世界が変わるだろうな、と思いました。

奇跡の脳

奇跡の脳