抱擁

永遠の仔〈4〉抱擁
天童 荒太


「同じようにね、好きな人とも距離を置いてしまうことが、あるんじゃないかと思ったの。でも、気を使いすぎるあまり、より深く、相手を傷つける場合もあるのと思うのよ。結婚しなくても、家族を持たなくてもいい。でもね、できれば、一緒に生きる相手は見つけてほしい。相手を認めることと、相手から認められることが、生きていくには、大事だと思うもの。一人で踏ん張ろうとし過ぎると、自分はもちろん、やっぱり誰かを傷つける気がする。すべてを、ひとりで背負って、解決しようとするばかりが、大人のやり方じゃない。人を信頼して、まかせたり、まかせられたりできるのも、ひとつの成長かなって思うし。ゆっくりでもいい、自分を開いてみたら、どう・・・人にすべてを託して甘えることを、自分自身に許してあげたら、どうかしら・・・」