地球交響曲第三番 魂の旅

地球交響曲第三番 魂の旅
龍村 仁


”音”で世界を見る、という回路が人間の中に備わっていることを我々は忘れがちだ。我々が日々恩恵を受けている現代の科学技術文明は、目に見える世界のみを「現実」として認識することから出発した文明だ。

しかし、この世には、目を閉じることによって初めて見えてくる世界がある。深夜、森の中にテントを張り、近くに熊の気配を感じながら、かすかな風邪の音や森の声に耳を澄ましている時、いのちの深奥から湧き起こってくる恐れと共に、全身体の感覚が異様に研ぎ澄まされてゆく。その研ぎ澄まされた感覚こそが、目に見えない世界を見る力なのだ。